オリジナルの生地とデザインが生まれる瞬間。

2022年で5年目を迎えるLautashi。東京コレクションへの参加や全国を巡るトランクショーで、デザイナーとして多角的に成長してきた鈴木えみは、現在、自身のブランドとどう向き合い、デザインを生み出しているのか。鈴木えみへのインタビューとともに、デザイン制作のプロセスを知ることで、より深くブランドの魅力に触れることができる。

オリジナリティが光るジャガード生地ができるまで

コレクションごとに生まれたオリジナルの生地。

シーズンテーマを持たず、現在はコレクションもナンバリング制度を採用しているLautashi。そこには、日常の中で心地よく纏い、シーズン問わず永く着用できる服であってほしいという、デザイナーの強い想いが込められている。中でも、コレクションごとに発表されるオリジナルの柄には、その普遍的な美しさを実現するため、緻密なリクエストとそれを実現する職人技が不可欠になってくる。今回はその一つであるジャガード生地にフォーカスし、その工程をみてみよう。

まずデザイナーは、コレクションのイメージから、柄に関するイメージをグラフィック担当に伝え、デザインデータとして起こす。それをもとに、同じジャガードの中でも、刺繍のような風合いが欲しいか、どんな糸を使いたいかなどを明確にし、チームと共有。生地のプロが、それを実現するには、機械織りか、手仕事が必要になってくるか、どの工場、どの職人にお願いするかなどをコーディネートし、生地見本の試作に入っていく。
「Lautashiを始めた頃は、手のひらサイズの小さな生地見本から全体像をイメージするのが難しく、これがパンツだったらどういう落ち感になるか、ワンピースだとどんな形になるか、なかなか想像できなくて。でもコレクションを重ねていくと、この生地のハリ具合や糸だとどんなシルエットになるかが、だんだんと見えてくるようになるんです。それは、デザイナーとしての経験もありますが、トランクショーで実際に皆さんがlautashiを試着している様子も見ている蓄積も大きいと思います」

職人の経験あってこそ誕生する、
独特のテクスチャー

養蚕業が盛んな桐生で100年以上続く工場。
職人が歯車を微調整する。
北向きの窓が並ぶファザード。

デザイナーの描く素材、シルエット。それが少しずつ形になっていくのは、職人の技術があってこそだ。Lautashiのジャガード生地を作っているのは、群馬県・桐生の「桐生絹織」。創業から100年近くも続くこの工場は、真北に向かった窓が並ぶノコギリ屋根が特徴。生地の色みや質感を正確に確認するため、直射日光を遮断するつくりになっているそうだ。現代ではほとんどの工場が、機織りの歯車のピッチをPCが制御しているのに対し、ここでは職人が手作業で調整している。lautashiのジャガード生地に独特の奥行きや風合いがあるのは、長年織りを続けてきた職人にしかわからない絶妙な“塩梅”によるものなのだ。

この歯車で横糸のピッチを調整している。

纏い手と一緒に育み、
成長していくブランドでありたい

美しい糸が重なり、唯一無二の生地を紡ぐ。

生地が完成した後、サンプル作りが始まる。試作と調整の繰り返しは、デリバリー直前まで続く。
「Lautashiの服は、皆さんが纏ってくれて初めて完成するもの。展示会やトランクショーで、皆さんの丈感やフィット感を見て、微調整することもあります。洋服って何よりも一番長い時間肌に触れているものだから、そこからワクワクするものを感じてもらいたい。これからも“作り手”と“纏い手”が一緒になって育っていくブランドでありたいと思っています」

ブランド“らしさ”を象徴する名アイテムの数々

美しいマーメイドや縦長パンツは
ブランドのシンボル的シルエット。

5年間のブランドの歩みを経て、マーメードシルエットのスカートやチョーカーディテール、縦長ラインのパンツなど、ブランドを代表するシグネチャー的なアイテムも増えてきた。
「今回のコレクションでは、新たにニットの定番となるものを作れたらな、と。まず全体の生地のイメージとして、相反するものが融合した、例えば硬いものと柔らかいものが共存しているような柄をつくりたいと思いました。そこに魚の鱗のようなディテールを加えて、立体感と光感が交錯するオリジナルのグラフィックに仕上げました。ニットでは、この等高線のようなベースの部分を“膨れジャガード”という手法で再現。軽やかで肌あたりのいいニット生地ができあがりました。それをブランド初となるネオンピンクで! セットアップで着ると、洋服がテンションを上げてくれるってこういうことだな、って感じます」

今シーズンの柄として起こしたグラフィック。

「クリエイティブは“作り手”が提供し、サイジングは“纏い手”とともに育む。このスタイルは、これからも続けていきたいと思っています」
これからもlautashiは一歩一歩着実に前進し、私たちに新たな景色を見せてくれるだろう。

【取材協力】
桐生絹織